現実の愛艇が物語へ、そして歌になった。「風とゆけ Susana2」

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自分が普段乗っているヨット、Susana2

海へ出る日も、ハーバーで過ごす時間も、船の中でひと息つく時間も、少しずつ自分の日常の一部になっています。

そんな現実の船が、いつの間にか自分の創作の中にも入り込むようになりました。

そして今度は、その物語の中で生まれた一曲が、本当に聴ける音楽になりました。

曲のタイトルは、

「風とゆけ Susana2」

です。


始まりは、現実のSusana2

Susana2は、自分にとって単なる「ヨット」というだけではありません。

風を読んで走る時間。

出航前に船を整える時間。

海の上で少し緊張する瞬間。

無事に戻ってきて、船の上でひと息つく時間。

そういうものを全部含めて、自分の暮らしの中にある存在です。

もちろん、毎回ドラマチックなことが起こるわけではありません。

むしろ何事もなく、安全に出て、安全に帰ってくる日の方が多い。

でも、その何でもない時間の積み重ねが、自分にとってはとても大切です。

そんなSusana2で過ごしてきた時間が、少しずつ物語の中へ入り込んでいきました。


小説の中にも、Susana2が現れた

自分が書いている
『ひとみと慎一の、波の音だけ覚えてた』
という物語があります。

その中で、慎一はある時期からヨットに惹かれていきます。

最初から「ヨットが人生の中心」という人物ではありません。

たまたま関わることになった船。

そこで知った風の感覚。

セールを上げて、風を受けて、少しずつ船が前へ進んでいく感覚。

それまで知らなかった世界に、少しずつ惹かれていく。

その過程に、現実のSusana2で自分が感じてきたものが自然に混ざっていきました。

実艇をそのまま物語の中へ持ち込んだ、というよりも、

自分がSusana2と過ごしてきた感覚が、物語の中で別の形になって現れた。

そんな感じです。


物語の中で、慎一が一曲を書いた

「風とゆけ Susana2」は、最初から現実の楽曲として作ろうとした曲ではありませんでした。

物語の中で、慎一が書いた曲です。

慎一がヨットに惹かれ始めた頃。

まだ何か大きな決断をしたわけでもなく、
ただ新しい世界に少しずつ足を踏み入れていた時期。

その時の気持ちを、バンドのデモテープのB面に、アコースティックで何気なく録音した。

そんな設定から生まれました。

慎一にとって、この曲は誰かに聴かせるためのものではありませんでした。

ソロデビューを狙って作った曲でもありません。

ただ、海へ出るようになって、風を知って、船に惹かれていく。

その時に感じていたものを、一本のテープに残しただけ。

それが「風とゆけ Susana2」です。


曲は、本人とは別の航路を進んでいく

物語の中では、その録音がすぐに世に出るわけではありません。

慎一本人にとっては、あくまで私的な一曲。

ところが、その録音が後輩を通じて音楽関係者の耳に留まり、
約2年後、思いがけない形で世に出ることになります。

本人が意図していなかったところで、曲が少しずつ自分の航路を見つけていく。

この設定も、なんとなくヨットらしいなと思っています。

出したい方向へ真っすぐ進めるとは限らない。

でも風を拾いながら、少しずつ別の航路を進んでいく。

そんなところも、この曲には合っていました。


だったら、本当にその曲を作ってみよう

ここまで設定を作ってしまうと、今度は思ってしまいます。

「物語の中に存在する曲なら、本当に聴けるようにしてみたらどうだろう」

架空の人物が、架空の時間の中で書いた曲。

でも、その曲が向けられているSusana2は、現実に存在しています。

それなら、その間にある曲も、本当に存在させてしまおう。

そうして実際に制作したのが、今回の「風とゆけ Susana2」です。

現実の船が物語へ入り、
物語の中で一曲が生まれ、
今度はその曲が現実の音楽として戻ってくる。

作っている本人としても、少し不思議な感覚でした。


「風とゆけ Susana2」

風とゆけ Susana2
Vocal:蓮見慎一
Pineapple Records

風とゆけ Susana2 YouTubeへ


歌詞に入れた、実際の海の感覚

この曲を作る時、海やヨットの言葉をただ雰囲気として並べるのではなく、
自分が実際に船に乗って感じているものを入れたいと思いました。

風。

セール。

波。

海鳥の声。

船の中で過ごす夜。

風向きが変わること。

思うように進まない時もあること。

どれも、ヨットに乗っていれば特別珍しいものではありません。

でも、だからこそ、その何気ないものを歌の中に残したかった。

例えば、言葉ひとつでも「帆」ではなく、普段使っている感覚に近い**「セール」**を使っています。

そういう小さなところも含めて、
自分の中にあるSusana2の時間を曲へ入れていきました。


現実から物語へ、物語からまた現実へ

最初にあったのは、現実のSusana2でした。

そこで過ごした時間が物語の中へ入り、
物語の中で慎一が一曲を書き、
その曲を今度は本当に音楽にしました。

ぐるっと一周して、また現実へ戻ってきたような感じがします。

創作というのは、たぶんこういうところが面白いのでしょう。

現実にあるものを、そのまま記録することもできる。

少し形を変えて物語にすることもできる。

そして、その物語からまた新しいものを現実に作ることもできる。

今回の「風とゆけ Susana2」は、自分にとってそんな一曲になりました。


次にSusana2で海へ出る時には、
この曲を船の上で流してみようと思います。

物語の中では、慎一がSusana2へ贈った曲。

でも自分にとってもこれは、
現実の愛艇Susana2へ贈る一曲になりました。

風とゆけ、Susana2。


小説について

「風とゆけ Susana2」が生まれた物語は、
『ひとみと慎一の、波の音だけ覚えてた』 シリーズの中にあります。

ひとみと慎一の、波の音だけ覚えてたシリーズ 第5話 風向きの違う春